80's New Wave Laboratory

80年代のニューウェイヴ音源を中心に、近況やYouTube映像などを交えてレビューを書いています

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Ultravox/Vienna

ViennaVienna
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今日紹介するのは、1980年発表のウルトラヴォックス [ Ultravox ] の4thアルバム『Vienna(邦題:ヴィエナ)』。

本作のメンバーは、前身となったタイガー・リリー [ Tiger Lily ] 時代からのメンバーであるウォーレン・カン [ Warren Cann ] (D)、クリス・クロス [ Criss Cross ] (B) 、ウルトラヴォックスの結成時からのメンバー、ビリー・カーリー [ Billy Currie ] (Key,Violin)、そして、ジョン・フォックス [ John Foxx ] に代わって新たに参加したミッジ・ユーロ [ Midge Ure ] (Vo,G,Syn)の4人。

前作『 Systems Of Romance』の発表後、フロントマンであったジョン・フォックスが脱退したため、一時的に活動休止状態となっていたウルトラヴォックスですが、スティーヴ・ストレンジ [ Steve Starange ] のプロジェクト=ヴィサージ [ Visage ] にビリー・カーリーが参加、そこで出会ったミッジ・ユーロと意気投合したことがきっかけとなり、この第2期ウルトラヴォックスの構想が練られることになったようです。

ミッジ・ユーロのそれまでの経歴は 80's UK New Wave『if i was : the very best of midge ure & ultlavox』のところで詳しく書かせていただいたのですが、ここでも簡単に紹介しておきますと、21歳の頃にスリック [ Slik ] というハード・ロック系のバンドでデビュー、翌年にはマルコム・マクラレン [ Malcolm Mclaren ] からセックス・ピストルズ [ Sex Pistols ] のギターとしてお誘いを受けるも、あっさり拒否したのだとか(笑)。

スリックというバンドは、この後、なぜかベイ・シティ・ローラーズを手がけたプロデューサーの手によってアイドル系バンドへと変貌を遂げ、全英チャート1位を獲得しています。

スリックの頃のライヴ映像

とはいえ、アイドル路線での活動には不満を感じていたのでしょう、同じスリックのメンバーでPVC2というパンク系バンドへとシフトしようと試みますが、元ピストルズのグレン・マトロックの誘いでリッチ・キッズ [ Rich Kids ] のボーカルに就任、しかし、方向性の違いからほどなく解散への道を辿ります。

リッチ・キッズの頃のライヴ映像

その後、ゲイリー・ムーアの代打としてシン・リジィというハード・ロック・バンドのツアーや、同じくシン・リジィのフロントマン、フィル・リノットのソロ・アルバムに参加するなどジャンル不問の活動を展開しながら(笑)、リッチ・キッズ時代の盟友ラスティー・イーガンからの誘いで、当時ニューウェイヴ系のクラブでDJやオーガナイザーとして人気を集めていたスティーヴ・ストレンジを中心とするプロジェクト・グループ=ヴィサージに参加。

このプロジェクトでビリー・カーリーと意気投合したことから第2期ウルトラヴォックスが始動、ヴィサージと並行して制作したのが本作『Vienna』なのです。

本作は『Systems Of Romance』でほぼ完成されたニュー・ロマンティックの原点とも言えるヨーロピアン・テイストたっぷりの耽美的ニューウェイヴ・サウンドを継承しつつ、ミッジ・ユーロの持つポップなセンスを前面に出し大成功、全英アルバム・チャート3位まで駆け上がり、一躍メジャー・バンドへと成長を遂げました。

なお、本作からシングル・カットされたのは、発表順に「Sleepwalk」「Passig Strangers」「Vienna」「At Stood Still」「New Europeans」の5枚。

中でも「Vienna」は全英チャート2位となる大ヒットを記録しているのですが、日本ではイマイチ、逆に、日本では、サントリーのCM(「角瓶」だったかな?)に「New Europeans」使われたことから大ヒットとなるものの、本国ではイマイチという不思議な現象が起きています。

「Sleepwalk」のPV
「Passing Strangers」のPV
「Vienna」のPV
「New Europeans」のPV

「Sleepwalk」のライヴ映像
「Passing Stranger」のライヴ映像
「Vienna」のライヴ映像
「All Stood Still」のライヴ映像
「New Europeans」のライヴ映像

ちなみに、本作のプロデュースは前作『Systems Of Romance』同様、コニー・プランク [ Conny Plank ] 。
メンバー・チェンジが行われ、より電子楽器の音を前面に出した作りになってはいますが、恐らく、前作と同じような方法論の下で制作されているのでしょうね。

ポルタメントの効いた印象的なリード・シンセと浮遊感のあるシンセサイザー、コンプレッサーの効いた生ドラムなどはそのままに、ミッジ・ユーロの音域が広く音程の安定したボーカルとエッジの効いたギターが加わることで、よりいっそうの進化を遂げています。

ひょっとすると、ミッジの経歴から読み取ることの出来るハード・ロック的なセンスが、ウルトラヴォックスの完成された個性にバランスよく配合されたのが良かったのかも知れません。

また、個人的には、インストものが増えていたり、クラシカルな生ピアノやバイオリンが効果的に使われていたりすることから、どこかプログレッシヴなイメージを抱いたことを覚えています。

ある意味、ほぼ同時期に同じメンツが関わって制作された『Visage』は、姉妹作的なサウンドだと言えますが、ウルトラヴォックスにはイロモノ的な要素がなかったのと、流行ものであることが多いダンス・ミュージックに染まらなかった分、硬派なイメージを持たれているのかも知れません。

とはいえ、この2枚のサウンドは、ジョン・フォックス期のウルトラヴォックスが下地になっていることは明らかです。

考えてみれば、70年代後半といえば、イギリスではまだまだパンクが全盛でしたから、ジョン・フォックスのような電子楽器を中心に据えた音作りは早過ぎたのでしょうね。

しかし、その後、パンク・ムーブメントの衰退と共に、ゲイリー・ニューマン [ Gary Numan ] やYMO、ジャパン [ Japan ] などなど、バンド・アンサンブルの中心にシンセサイザーを導入するバンドが続々と登場し、同時に電子楽器も急速な進化を遂げて行きます。

言わば、時代が彼らに追いついたのでしょう。

そう考えると、先駆者であった彼らがこの頃になって注目を集めたのもうなずけます。


いやぁ、それにしても、この頃(79~80年)のミッジ・ユーロの活動は、恐ろしいまでに意欲的です。

シン・リジィのツアーにフィル・リノットのソロアルバムへのゲスト参加、ヴィサージと新生ウルトラヴォックスのシングル、アルバム制作、そしてウルトラヴォックスのツアー、これだけのことをわずか2年で行ったのです。

しかも、この時期に制作されたヴィサージの1stアルバム『Visage』と本作、ウルトラヴォックスの『Vienna』は、ニューウェイヴ史を語る上で決して外すことの出来ない重要な作品です。

人間、忙しいときの方がより効率よく仕事ができると言いますが、この頃のミッジの精力的な活動と結果を見ればそれも納得できますよね。

とにかく、未聴の方は一度は耳を通していただきたい名盤中の名盤です。



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