80's New Wave Laboratory

80年代のニューウェイヴ音源を中心に、近況やYouTube映像などを交えてレビューを書いています

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One World One Voice

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Various Artists

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今日紹介する『One World One Voice(邦題:ワン・ワールド・ワン・ヴォイス)』は、10ccやゴドレイ&クレーム [ Godley & Creme ] のメンバーとして知られるケヴィン・ゴドレイ [ Kevin Godley ] の提唱、ルパート・ハイン [ Rupert Hine ] のプロデュースで、なんと総勢292名のミュージシャンと英国BBCを始めとする世界20カ国の放送局の協力によって制作された1990年発表の凄まじい規模の企画ものアルバム。

本作のテーマは「世界は一つ」。
ちょうど、本作が発表される前年1989年11月にベルリンの壁が崩れ去るという歴史的な出来事があっただけに、戦争や国と国のもめ事、人種差別はやめましょうというメッセージを音楽で伝えるというコンセプトだったのでしょうが、発表から20年ほど経った今引っぱり出して聴き込んでいると、最近の地球温暖化の問題までも考えさせられてしまいます。
う~ん、なんと深いメッセージなんでしょう。

ま、この話題について書き出すとキリがないので、早速、CDのレビューに移させていただくことにします。


まず、本作に収録されている曲は、なんと52分47秒の曲がたった1曲だけ。

つまり、CDの利点の一つである曲飛ばしができないため、聴きたいアーチストのパートがある場合、早送りで対応しなくてはならないわけですね(笑)。

私のようにロックやポップスの音源の操作に慣れている者にとっては何ともじゃまくさい話ですが、たまにはこういった壮大なスケールの作品をじっくりと聴く時間を作るのも良いものです。


さて、本作の基本コンセプトは「世界は一つ」ということですので、聴感上はこの1曲の中でミュージシャンが入れ替わり立ち代わりノンストップでセッションするという作りになっています。

ただ、292名もの著名ミュージシャンを実際に一カ所に集めて録音するなんてことは限りなく不可能に近いわけで、仮に出来たとしてもスケジュール調整だけでかなりの時間を費やすことになるでしょう。

また、各アーチストが一曲づつ持ち寄った楽曲をオムニバス形式でまとめたコンセプト・アルバムなどというのもよくあるパターンですが、これでは一曲ごとに仕切りが出来てしまい、「世界は一つ」というメッセージを伝えるには非力な気がします。

そこでケヴィンが考えたのが、リレー形式でテープをバトンしていき、それぞれの国のスタジオでパートごとにレコーディング、そうして完成した数本のマスターテープを編集して1曲でCD1枚の作品に仕上げるというもの。

なるほど、この方法ならメッセージを伝える意味でもインパクトがありますし、スケジュール的にも制作費的にも現実味があります。

しかし、この方法とて簡単ではありません。

日本盤のライナーによれば、全てのスタジオのレコーディングにはケヴィンとルパートが立ち会ったそうで、期間で言えば、1990年2月28日のニューヨークから4月28日のレニングラードまでまるまる2ヶ月間、この間に2人が旅した距離は 44,964マイル、世界26カ所のレコーディング・スタジオで、合計10,758フィートものテープを使用したのだとか。

もちろん、ジャンルは様々ですし、レコーディング環境も均一ではなかったでしょうから、この後、これだけの量のテープをスタジオで編集、加工して1曲にまとめるのはさぞかし骨の折れる作業だったことでしょう。

途中、数カ所でクロスフェード(フェードインとフェードアウトが重なり合う状態)で繋いでいる部分もあるのですが、決して安易に曲と曲を繋いでいるわけではなく、自然な流れの中で穏やかに曲調が変化してゆくように計算された編集のように聴こえます。

もちろん、テープ編集の際にやむなくクロスフェードという手法をとったのでしょうが、それを逆手に取って、長い1曲の中でのメリハリをつけるためのブレイクのような役割を持たせたのかも知れません。

しかし、全体的に見れば、こういった技法で繋いである部分は最小限に抑えられており、大半はゴドレイ&クレームのシングル「Cry」のプロモ・ビデオの顔のモーフィング映像のように曲調が変化してゆくのです。

ある意味、映画「エクソシスト」のテーマとして有名なマイク・オールドフィールド [ Mike Oldfield ] の『Tubular Bells』のような作りと言えなくもないのですが、これだけ多くのミュージシャンの個性がコラージュされた作品は他にはないでしょう。

実際にお聴きになれば、この面白さがおわかりいただけると思います。


ところで、本作は、これだけ長尺の曲が1曲だけですので、イメージ的にプログレや現代音楽のような小難しい印象を持たれる方がおられると思うのですが、基本的にはわかりやすく聴きやすいポップスの集合体です。

テーマや参加アーチストの顔ぶれをみてもわかるように、いわゆるワールド・ミュージック的な要素を多分に含んではいますが、パーツごとをクローズアップしてみると、ジャズやクラシック、プログレなど、どちらかと言えば難解なイメージを持たれがちなパーツの他に、ロックンロール、レゲエ、ネオアコなどのいわゆるポップス・フォーマットの聴きやすいサウンドも多く、さらっと流して聴けばDJがバラバラのジャンルの曲をうまくノンストップで繋いだアルバムのような印象を持たれると思います。

さらにじっくり聴けば、それぞれのパーツで様々なジャンルが交錯し合い、それらがカラフルな帯を紡ぐかのように入れ替わってゆくのを楽しんでいただけることでしょう。

残念ながら、私のよく知っているミュージシャンばかりではないため、どこでどのミュージシャンが何をしているのかを正確に解説することができないのですが、日本盤のライナーノーツにその辺りのことが詳しく書かれておりましたので、文章をそのまま一言一句変えることなく引用させていただきます(下線が入っているアーチスト名をクリックすると、以前書いた当ブログの関連記事に飛べます)。


--------以下 日本盤ライナーノーツより引用--------
「レコーディング自体はスティングによるベーシック・トラックの作曲と録音から始まったが(このベース・ラインをもとにミュージシャンはソロをとったり、ハーモニーを付けたり、もちろんアレンジして展開させていく)、アルバムはケヴィン・ゴドレイのメッセージで重々しく幕を開ける。「僕らは知っている。すべての物はつながっている。家族を結びつける”血”のように…」。最初のアコースティック・ギターはエグルト・ギスモンティ、ソプラノ・サックスはウェイン・ショーター(?)、ピアノ線をはじくのが坂本龍一、そしてリンガラ風リズムにのってテーマを奏でるのがレミー・オンガラとスーパー・マティミラ、続いてスティング、ドレッド、チャズ・リッチ、RMR、アフリカ・バンバータ、スティーヴ・スティーヴンス、ザ・フィクスのセッションがしばらく続く。途中でフィーチュアされるのはサックスのコートーニー・パイン、ニュー・ヴォイセス・オブ・フリーダムである。これもニューヨーク録音。エルメット・バスコアールのキーボード、S・スティーヴンスのアコースティック・ギター、ラップ・パート、そしてニューヨークのスタジオ・セッションが続く。ブレイク後、ヘルシンキ・レコーディングによるジプシー・キングス。おなじみのサウンドだが、途中でヌスラット・ファテ・アリ・ハーンがソロをとる(!)。ジプシー・キングスをバックにしたヌスラットの歌。他では聞けない。ブレイクのあと、LAからNATIVE LAND/THEMBALA-ZULU GROUP、A GROUP OF BEACH HIPPIES、A ONE MAN BANDの演奏、ローリー・アンダーソンも一瞬フィーチュアされる。そしてリオからサンバのパート。ア・ヴェラ・グアルダ・ダ・ボルテーラ、クララ・ソンドローニ、そしてサンバ・スクールの学生たち(?)が登場。一転してピーター・ガブルエルとジェフリー・オリヤマ、ミルトン・ナシメント、ウェイン、坂本、ギスモンティ、リトル・スティーヴン、スチュワート・コープランドらが登場する。ONE WORLD ONE VOICE,ONE HEART ONE TRIBE,ONE SOULとコーラスには世界中の街角のひとたちが参加。前半のヤマである。さらに、デイヴ・ステュアートとスピリチュアル・カウボーイズ、シェイクスピア・シスターズをフィーチュアしてLAのヒンズー・テンプルから展開。とにかくいろんなトラックがミックスされていて、書いていくとキリがないほど。一転してブラック・ウフルのレゲエ・パート。ギター・ソロはS・スティーヴンス、次第にレゲエとリンガラがクロスする。レミー・オンガラの強力なアジテイション、ヌスラットの叫びのような歌。いやはや驚くべき内容である。
 後半ではクラナド、スザンヌ・ヴェガ、ローリー・アンダーソン、マリア・マッキー、ジョニー・クレッグ、そしてミルトン・ナシメント、いまピーター・ガブリエルが一番気に入っているというジェフリー・オリヤマのすみきった歌声、ルー・リード、サリフ・ケイタ(美しい!)、そしてジョニー・クレッグのライヴ(このためにまるまる一曲作ったのだろうか?)、ハワード・ジョーンズ、ホッサム・ラムゼイ。鼓童などがフィーチュアされ(聞き落としがあるかもしれない)、いよいよフィナーレを飾るのはレニングラード・シンフォニー・オーケストラである。
 いくらテープをリレーしながらとはいえ、驚くべきこの編集力。トータル60分ちかく。ちゃんと起承転結があり、あらかじめ計算されていたようにも思えてしまう。」


以上のようにライナーでは解説されていたのですが、CDの裏ジャケットを見ると、チーフタンズ [ The Chieftains ] 、テレンス・トレント・ダービー [ Terence Trent D'Arby ] (=現・サナンダ・マイトレイヤ [ Sananda Maitreya ] )、ボブ・ゲルドフ [ Bob Geldof ] 、デイヴ・ギルモア [ David Gilmour ] 、エディ・グラント [ Eddy Grant ] 、クリッシー・ハインド [ Chrissie Hynde ] 、ペンギン・カフェ・オーケストラ [ Penguin Cafe Orchestra ] 、ロビー・ロバートソン [ Robbie Robertson ] 、ジョー・ストラマー [ Joe Strummer ] などの名前もクレジットされており、注意深く聴けば、それぞれのミュージシャンの個性的なプレイも確認できると思います。 

なお、YouTubeにアップされたフルサイズの『One World One Voice』のビデオ映像を発見しました。
12分割されていて、全てを見ると1時間ほどかかってしまうのですが、各アーチストの出演箇所がはっきりわかりますので、興味を持たれた方はお時間のある時にご覧ください。
かなり見応えがあると思いますよ。

 ↓(クリックでYouTube映像に飛びます)

One World One Voice part 1/12
One World One Voice part 2/12
One World One Voice part 3/12
One World One Voice part 4/12
One World One Voice part 5/12
One World One Voice part 6/12
One World One Voice part 7/12
One World One Voice part 8/12
One World One Voice part 9/12
One World One Voice part 10/12
One World One Voice part 11/12
One World One Voice part 12/12

ちなみに、上の映像とメイキング映像を収録したVHSビデオもアマゾンで販売していましたのであわせて紹介しておきます。
 ↓
One World One Voice [VHS] [Import]


さて、普通、このようなテーマの作品を大勢のアーチストで制作する時は、バンドエイドの『Do They Know It's Christmas』やN.M.L.『ZERO LANDMINE』のようにチャリティ形式をとることが多いように思うのですが、本作には売り上げを寄付するような意味の記述は一切ありません。

つまり、チャリティで集められたお金によって世界を救うわけではなく、音楽そのものによって一人一人の意識に「世界は一つ」であることを訴えかけているわけですね。

とはいえ、チャリティを否定しているわけではありません。

チャリティ・アルバムは確かに有意義なものだと思いますが、もし、世界中の人々全てが本当に「世界は一つ」という認識を持つことができれば、募金やチャリティといった呼びかけすら必要なくなるのかも知れません。

う~ん、深いテーマです。


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