80's New Wave Laboratory

80年代のニューウェイヴ音源を中心に、近況やYouTube映像などを交えてレビューを書いています

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David Sylvian/Everything and Nothing

Everything and NothingEverything and Nothing
David Sylvian

Virgin 2000-11-07
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今日、2月23日は私の崇拝するデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] の誕生日。
彼は1958年生まれですので、今日でなんと50歳になったというわけですね。

いや~、めでたいことです。

そこで、今日は、2000年に発表されたデヴィッド・シルヴィアンの初のベスト盤を紹介したいと思います。

まず、本作は、2枚組のCDに、未発表曲やボーカルを新しく録音し直した曲、また、新しくミックスし直した曲などが29曲も収録されており、全作品を持っているコアなファンにとっても楽しめる新鮮な内容の作品です。

しかし、ベスト盤というのはあくまでCDショップなどの便宜上の区分けであり、本作の内容的にはシルヴィアンのヴァージン在籍時代の軌跡と言った方がしっくりきます。

というのも、一番有名な「戦場のメリークリスマス」のボーカル入りである坂本龍一とのコラボ「Forbidden Colours(邦題:禁じられた色彩)」や、シルヴィアン名義のシングルで一番売れた「Red Guitar」を始めとする「Pulling Punches」「Silver Moon」などのシングル曲を収録していないのです。

これらの楽曲を収録すれば、立派にベスト盤としてセールスを見込めたであろうはずなのですが、なぜこのような選曲にしたのでしょうか。
私が思うに、これまで彼を支えてくれたファンへの彼なりのサービス精神なのではないかと思うわけです。

彼のアルバムを持っておられない方がとりあえずの意味でベスト盤を買うのなら、比較的聞きやすいシングルをまとめたアルバムの方が嬉しいでしょうが、既存の作品を持っておられる方にとっては不必要なものなわけで、よくある未発表曲を1、2曲追加したベスト盤であったとしたら、それだけのために無駄なお金を使うことになるわけです。

その点、本作は最低でもリマスターが施されており、未発表曲やニューレコーディング、ニューミックスのものも多いため、シルヴィアンの作品全てを持っている方にとっても全く損のない内容となっています。

曲の紹介を全て書くとえらいことになりそうなので、目玉となる数曲の紹介だけにさせて頂きます。

まず、Disc1-1曲目の「The Scent Of Magnolia(邦題:マグノリアの残り香)」は、99年発表の『Dead Bees on a Cake』レコーディング時に制作された未発表曲。
シルヴィアンにしては珍しくポップでわかりやすい曲でなので、逆の意味で外されたこともうなずけます。
もちろん、未発表曲に関しても、今回の収録にあたり新しくボーカルが録り直され、ミックスもされているようです。

5曲目の「Ride」は、87年発表の『Secrets of the Beehive』のレコーディング時に制作された未発表曲。
これは名曲です。
ポップさとけだるさの絶妙なバランスが最高で、とにかくシルヴィアンの歌ものらしい持ち味が100%出ているすばらしい曲です。
いかにもスティーヴ・ジャンセンらしいドラムや、坂本龍一らしい手癖のピアノ、デヴィッド・トーンのエフェクティブなギター、マーク・アイシャムのトランペットが見事にブレンドされた珠玉の1曲です。
なぜ収録されなかったのか不思議なくらい良く出来ていると思います。

7曲目の「Ghosts」は、ご存知81年発表のJAPANの『Tin Drum(邦題:錻力の太鼓)』に収録された、ジャパンの曲としては一番売れた楽曲。
新しくボーカルが録り直され、ミックスもされているので、新鮮に感じます。

8曲目の「Pop Song」は、89年に発表されたシルヴィアン名義では珍しいシングルのみの楽曲で、リマスタリングが施されています。
このシングルはやや入手困難になっているので、今回の収録は嬉しいところです。

14曲目の「Thoroughly Lost To Logic」は「Pop Song」の録音時に制作された未発表曲で、現代音楽的なポエトリー・リーディング系の小曲。

Disk2-2曲目の「Cover Me With Flowers」は、『Dead Bees on a Cake』の録音時の未発表曲で、やはりシルヴィアン作品らしい要素を多分に含んだ少々重ための楽曲です。

8曲目の「Some Kind Of Fool」は、中では一番旧く、80年に発表したJAPANの『Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)』の録音時の未発表曲。
実にドラマティックな展開で、当時のシルヴィアンの音楽的な成熟具合をうかがい知ることができます。
その時代の作品が本作で違和感を持たないというのはミックスの技術だけのせいではないでしょう。

12曲目「Bouy」は、86年に発表のミック・カーンのソロ『Dreams of Reason Produce Monsters』に収録されたシングル曲のリマスターで、ジャパン解散以降、ミック・カーンとのセッションはこの時の2曲と、ジャパンの再結成と騒がれたレイン・トゥリー・クロウの2回のみ。
まさかこの曲が収録されるとは思ってもみませんでした(笑)。
しかし、原曲では若干大きめのベースパートを多少抑えたミックスとなっています。

14曲目「Bamboo Houses」は、82年発表の坂本龍一との共作シングル「Bomboo Music」のB面曲のニューリミックス。
坂本龍一の「ボクが・大好きだった建物たち・今は~」という坂本龍一のくぐもった声を聴くと、昔FMで聴いていたサウンド・ストリートを思い出してしまいます。
これは素人耳で聴いても明らかに原曲とは違う音色が使われており、新鮮に感じられます。

15曲目の「Come Morning」は、95年発表のニコラ・アレシーニ&ピエール・ルイジ・アンドレオーニのアルバム『マルコ・ポーロ』の1曲目に収録された美しい楽曲のリミックスで、本作では最後を飾ることになりました。


他の楽曲については下記の曲名の頭に印をつけて紹介をさせて頂きます。
◎は未発表曲
○はニューミックス
+はニューボーカル&リミックス
■はリマスタード

ディスク:1
◎ 1. The Scent Of Magnolia
○ 2. Heartbeat (Tainai Kaiki II)
■ 3. Blackwater
◎ 4. Albuquerque (Dobro #6)
◎ 5. Ride
○ 6. The Golden Way
+ 7. Ghosts
■ 8. Pop Song
■ 9. Every Colour You Are
■ 10. Wanderlust
■ 11. God's Monkey
■ 12. Let The Happiness In
■ 13. I Surrender
◎ 14. Thoroughly Lost To Logic

ディスク:2
■ 1. Jean The Birdman
◎ 2. Cover Me With Flowers
■ 3. The Boy With The Gun
■ 4. Riverman
◎ 5. Aparna And Nimisha (Dobro #5)
■ 6. Midnight Sun
■ 7. Orpheus
◎ 8. Some Kind Of Fool
■ 9. Cries And Whispers
■ 10. Godman
■ 11. Laughter And Forgetting
■ 12. Buoy
○ 13. Weathered Wall
○ 14. Bamboo Houses
○ 15. Come Morning

なお、アマゾンに入れば全曲試聴可能ですので、まず聴いて頂いた方がわかりやすいかも知れません。

また、本作の初回輸入盤(Limited Edition)はもう1枚のボーナスCDの付いた3枚組で発売されました。
ボーナスディスクの収録曲は下記の通りです。

1.「The Scent Of Magnolia」(Edit)
2.「The Blinding Light of Heaven」
3.「The Scent Of Magnolia」(Portobello Mix)
4.「Brilliant Trees」(Version 2000)

このDisk3には合計23分強収録されておりピクチャーディスク仕様になってます。
しかし、現在ではプレミアがついてしまい、一番安いものでも 14,086円もしています。
それでもどうしても初回盤が欲しいという方は『Everything and Nothing』←こちらからアマゾンに入れます。


さて、実は、始めにヴァージン在籍時代の軌跡と書きましたが、実は、まさしくその通りなんです。
この後、ヴァージン在籍時代のインストものをまとめたアルバムを発表し、一つの区切り(もしくは置き土産)がついたかのようにシルヴィアンはヴァージンを去りました。
そして、自身のレーベル「サマディ」を設立、いきなりアンコマーシャルな作品『Blemish』を発表したのです。

この作品は、かなり実験的な作品で、ほとんどインプロ(即興演奏)によって制作されており、流行歌を聴いておられる方にとっては非常に難解なものだったと思います。
恐らく、ヴァージンでは発表することができなかったのではないでしょうか。

そのため、初回分はサマディのサイトからのみのネット販売のみという形で発売されたのですが、それでも玄人ウケだけはよかったようで、一般のCDショップでも普通に買えるようになりました。
このレーベルを設立したことで自由にやりたいことができるようになったというわけですね。

そんなシルヴィアンも今日で50歳。

これからの活動も楽しみにしております。



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Anne Pigalle/Everything could be so perfect...

Anne PigalleEverything Could Be...
Anne Pigalle

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今日紹介するのは、アン・ピガール [ Anne Pigalle ] の『Everything could be so perfect...(邦題:青春の彷徨)』です。

彼女は、1985年にトレヴァー・ホーン主催のZTTレーベルからシングル「He! Stranger(邦題:異邦人)」でデビューし、同年、デビュー・アルバムである本作『Everything could be so perfect...』を発表、ワールド・ツアー後(来日公演もありました)、あっさりと表舞台から消えてしまった伝説とも言えるアーチスト。

なお、英国盤では「He! Stranger」の他にも、珍しい10inchのマキシ・シングル「Hot Sagas」と「Why Does It Have To Be Way...」のシングルも発表されています。

本作は、9曲中6曲が英語、3曲が彼女の母国語である仏語で歌われており、素人耳でもわかるフランス訛りの英語のせいなのか、生まれもってのものなのか、アルバム全体を通して独特のアンニュイ(死語?)な大人の雰囲気を漂わせています。

アルバム全体の出音としては、ZTTらしさを感じる大袈裟な空間処理やアレンジが施されているものの、ジャジーなピアノとストリングスが前面に出ているため、当時の一連のZTTアーチストとは別物で、曲調は暗めながら非常にムーディーなイメージが残ると思います。

わかりやすく言えば、ドイツっぽさを感じさせるプロパガンダ [ Propaganda ] に対して、フランスっぽさを前面に出したZTT作品といったところでしょうか。

60年代の映画音楽のようなムーディーさと、フランス系アーチストの持つ独特のアンニュイさ、そして80's UKならではのゴージャスな空間処理と電子楽器の音、それらを、シャンソンやワルツなどで味付けをしたような音楽です。

個人的には、ZTTの作品群の中でプロパガンダと並んでダントツの大好物でして、近年、私がプロデュースしたファッション・ショーの最終シーンでこの「He! Stranger」(12inchバージョン)を使ったほどなんですよ。

いや~、発表から20年以上経っているというのに、何度聴いても飽きることがありません(笑)。

そんな作品だけに、最初に書き始めたライブドア版の音楽ブログ「80's UK New Wave」でも、開設当時から紹介したかった作品のひとつだったのですが、残念なことに、すでに廃盤となっており、商品自体がアマゾンになかったため、なかなか記事に出来なかったことを覚えています。

最近になってZTTからリイシューの話があったそうですが、彼女はそれを拒否したそうですので、恐らく、二度とプレスされることはないと思います。

残念ながら、YouTubeでも映像は存在せず、アマゾンで試聴することもできませんが、ここまでのお話を読んでピン!とこられた方は、間違いなく買って損をすることはないアルバムだと思いますよ。

ちなみに、以前、「He Stranger」が、日本の高級車のTVCM(車種は忘れました)で流れたことがありましたので、アンを知らないという方でも実際に聴いてみると案外耳に残っているかも知れませんね。


さて、ここで彼女がデビューするまでの経緯を紹介しておきましょう。

アン・ピガールは南フランスに生まれ、5歳でパリに移り住み、13歳で早くもバンドを結成、この当時からイギリスの音楽シーンに興味を持っていたそうです。

20歳になると意を決してロンドンに移住(1980年前後だと思われます)、その頃、本作でほとんどの楽曲を制作しているニック・プリタス [ Nick Plytas ] と出会い、ヴィア・ヴァガボンド [ Via Vagabond ] というユニットを結成しています。

なお、相方ニック・プリタスのソロ・デビュー・シングル「Who Likes Jazz?」は、元々、インディーズ・レーベルから先述のヴィア・ヴァガボンド名義でリリースした曲だそうで、ボーカル部分のないインスト曲ながら、当時恋仲だったアンとニックの声で「ジャッ、ジャーズ♪」というコーラスが入っているのだとか。

また、本作に収録された楽曲は、アン自身が作詞、作曲した「Looking for Love」以外、全てニック・プリタスの作曲となっており、「Via Vagabond」というその名もズバリの曲名も存在することから、ヴィア・ヴァガボンドにおいてすでに完成していた楽曲を新たにZTTレーベルの手を借りて発表したようにも感じられます。

ただ、ヴィア・ヴァガボンドというユニットに関する情報があまりにも少ないため、いずれも確証は得られていません(間違っていたらごめんなさい)。


話は前後してしまいますが、ZTTレーベルとの出会いは、ヴィア・ヴァガボンドでいろんなレコード会社にデモテープを送ったところ、ZTTの広報を担当していたポール・モーリー[ Paul Morley ] だけが興味を示し契約に至ったそうです。

しかし、本作はヴィア・ヴァガボンド名義ではなく、あくまでもアン・ピガールのソロ。

ニック・プリタスはZTTの所属アーチストになることを拒否したそうですので、結果的に、アンのソロ名義のアルバムをサポートする形で関わったのだと解釈しています。

ま、2人の恋愛関係が破局しているのもこの頃ですので、そういった事情もあるのかも知れませんが…。

ちなみに、アンの契約が決まったのは、同じくZTTから1983年にデビューしているフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドの契約よりも前の話だそうですから、本作の制作にいかに時間がかかったのかがお分かりいただけると思います。


ところで、アンの歌声は、悪く言えば微妙に音程が合っていないようにも感じられるのですが、語りかけるようなシャンソン風の歌唱法と考えればそれも納得がいきます。

雰囲気は違うのですが、歌唱法に限って言うなら、ソフト・セル [ Soft Cell ] のマーク・アーモンド [ Marc Almond ] にも同じようなものを感じます。
彼も、シャンソンがかなりお好きなようですから類似点があっても当然ですね。

また、アンは、エディット・ピアフが大好きだそうで、日本語の訳詞を読んでもその影響を強く感じることができます。

私は英語やフランス語に対して知識が薄いため、日本語の訳詞だけでしか判断できませんが、これを読む限り、同じくエディット・ピアフの影響を強く受けた越路吹雪や美輪明宏が歌っていてもおかしくないような、女性の恋や失恋の様子をドライに表現したポエティックな歌詞です。

ZTTに送ったヴィア・ヴァガボンドのデモ・テープがどのような曲調だったのかは不明ですが、もし、シャンソン風の楽曲だったとしたら、ヒットチャートを駆け上がることは想像できなかったでしょうから、そう考えると、他のレコード会社が反応しなかったことも理解ができますよね。

できれば、10inchシングルのみだった「Hot Sagas」や、未発表曲と一緒に、ヴィア・ヴァガボンド時代の楽曲をボーナス・トラックに収録した上で、本作の再発をお願いしたいところですが・・・無理なんでしょうね、やっぱり。


なお、彼女は現在、写真、絵画の方面で活躍しながら、新曲をネットで配信し、時折ライヴも行っているようです。

興味を持たれた方は、下記の彼女のホームページをご覧になってみてはいかがでしょうか?

本作に収録されている楽曲ではありませんが、MySpaceの方では、彼女の最近のライヴ音源を数曲フル・サイズで聴くことができますよ。

アン・ピガール HP
アン・ピガール MySpace



Roxy Music/The Thrill Of It All(DVD)

ヴィジュアル・ヒストリー 1972-1982ヴィジュアル・ヒストリー 1972-1982
ロキシー・ミュージック

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今年に入って、ロキシー・ミュージック [ Roxy Music ] のデビューから解散までの軌跡をたっぷりと収録した2枚組DVD『The Thrill Of It All(邦題:ヴィジュアル・ヒストリー 1972 - 1982)』が発売されました(輸入盤『Thrill of It All: A Visual History 1972-1982 [リージョン1仕様] 』は昨年末に発売されています)。

プロモーション・ビデオはもちろんのこと、これまで海賊版のビデオやYouTubeでしか見ることの出来なかったTV番組出演時の映像や、当時のライヴ映像など、貴重な映像をほぼ年代順に合計38曲(日本盤)も収録しており、このDVD2枚でロキシー・ミュージックの軌跡を追うことができます。

このような企画の映像作品としては、1989年に発表された『Total Recall : A History 1972 - 1982』というビデオ(後にDVDでも発売されています)があったのですが、こちらは41曲も収録しているという体裁はとっていたものの、収録時間は約90分。
当然、全ての曲をフルに収録することはできず、短くカットされた映像を継ぎはぎしたダイジェスト的な作品となっていたのですが、それでも貴重な映像をきれいな画質で見ることができる唯一のオフィシャル作品であったため、ファンの間では必須アイテムとなっていました。

しかし、本作『Thrill Of It All』では、わずかに曲数は減っているものの、全曲フルバージョンで収録されているので『Total Recall』のような歯痒さはなく、しっかりと1曲1曲を堪能することができます。

ま、なにぶん、30年以上前の映像も含まれますので、最近のPVのようなきれいな画質は望めませんが、昔の裏ビデオのような画質の海賊版ビデオ(笑)に比べればかなりの高画質と言えましょう。

どちらかと言えば後期のファンの私ですが、初期の実験的な要素とパワフルで荒っぽい部分は非常に見応えがあり、そのスリリングなプレイは80年代のニューウェイヴ系アーチスト達に強く影響を与えていることが読み取れます。

初期のブライアン・フェリー [ Bryan Ferry ] の音程を無視するかのようなボーカル(いわゆるフェリー節)を始め、デビュー期のブライアン・イーノ [ Brian Eno ] が発する斬新で効果音的なシンセサイザーや、スマートなアンディ・マッケイ [ Andy Mackay ] がパワフルに吹きまくるサックス、フィル・マンザネラ [ Phil Manzanera ] のキンキラキンのファンキーなサングラスなど、見所は山のようにあります(笑)。

しかも、彼らのサウンドは、どのジャンルにも収まりがつかない新しいスタイル(=当時のニューウェイヴだったと言えるでしょう)だったのです。

そして、そんな彼らが腕を上げ、徐々に落ち着いていく様は実に興味深いところで、私にとっては、不朽の名盤『Avalon』が生まれるまでの歴史でもあるわけです。

ロキシーやフェリー、イーノのファンの方はもちろんのこと、彼らと共に時代を作ってきたデヴィッド・ボウイ [ David Bowie ] のファンの方、そして、彼らの影響を強く受けているであろうジャパン [ Japan ] やABC、スパンダー・バレエ [ Spandau Ballet ] などのファンの方、また、その他のニューロマ系アーチストのファンの方にも、ぜひご覧いただきたいバイブル的な映像作品です。

なお、収録曲は下記の通りで、文字が赤くなっている曲に関しては、可能な限り本作に収録されている映像をYouTubeから探しリンクしておきました(一部、違うバージョンで紹介しています)。

Disc 1 1972-1976

1. Re-make/Re-model (The Royal College Of Art, London 1972)
2. Ladytron (The Old Grey Whistle Test, BBC Television 1972)
3. Virginia Plain (Top Of The Pops, BBC Television 1972)
4. For Your Pleasure (Full House, BBC Television 1972)
5. Do The Strand (The Old Grey Whistle Test, BBC Television 1973)
6. In Every Dream Home A Heartache (The Old Grey Whistle Test, BBC Television 1973)
7. Editions Of You (The Golden Rose Festival, Montreux 1973)
8. Pyjamarama (Musikladen, German Television 1974)
9. Amazona (Musikladen, German Television 1974)
10. Psalm (Musikladen, German Television 1974)
11. All I Want Is You (Top Of The Pops, BBC Television 1974)
12. Love Is The Drug (Supersonic, London Weekend Television 1975)
13. Both Ends Burning (The Empire Pool, Wembley, London 1975)
14. The Thrill Of It All (Konserthaus, Stockholm, Sweden 1976)
15. Mother Of Pearl (Konserthaus, Stockholm, Sweden 1976)
16. Nightingale (Konserthaus, Stockholm, Sweden 1976)
17. Out Of The Blue (Konserthaus, Stockholm, Sweden 1976)
18. Street Life (Konserthaus, Stockholm, Sweden 1976)


Disc 2 1979-1982

1. Dance Away (ABBA In Switzerland, BBC Television 1979)
2. Manifesto (Manchester Apollo, England 1979)
3. A Song For Europe (Manchester Apollo, England 1979)
4. Still Falls The Rain (Manchester Apollo, England 1979)
5. Ain't That So (Manchester Apollo, England 1979)
6. Angel Eyes (Promotional Video 1979)
7. Trash (Promotional Video 1979)
8. Over You (Top Of The Pops, BBC Television 1980)
9. Oh Yeah! (On The Radio) (Top Of The Pops, BBC Television 1980)
10. Same Old Scene (Promotional Video 1980)
11. Rain, Rain, Rain (Rockpop In Concert, German Television 1980)
12. Flesh And Blood (Rockpop In Concert, German Television 1980)
13. Jealous Guy (Promotional Video 1981)
14. The Main Thing (Frejus, France 1982)
15. While My Heart Is Still Beating (Frejus, France 1982)
16. Avalon (Frejus, France 1982)
17. My Only Love (Frejus, France 1982)
18. More Than This (Promotional Video 1982)

Bonus Tracks:

19. The Main Thing (Promotional Video 1982)
20. Avalon (Promotional Video 1982)

いやはや、こんな貴重な映像が手軽にDVDで見れるとは、実に便利な世の中になったものです。
昔、海賊版ビデオ屋を探しまわって質の悪いコレクターズ・ビデオを高価な値段で購入していたのはいったい何だったのでしょう(笑)。

そういう意味ではちょっと複雑な気持ちですが、できれば、他のアーチストの貴重な映像も、このような形で販売していただきたいものですね。


追記:
本作とは関係ないのですが、今日はロキシー・マジック [ Roxy Magic ] (笑)というイギリスのトリビュート・バンド(ロキシー専門のモノマネ・バンド?)を紹介しておきたいと思います。

恐ろしいばかりに完コピされたその演奏は、そっくり過ぎてとにかく笑えますので、ファンの方はぜひご覧になってみてください。

ボーカリストは何となくフェリーと雰囲気が似ていますし、あの独特の動きまで再現していますよ。

バックのメンバーは、キャラクター的にフェリー役ほどハマっているわけではありませんが、音だけを聴いていると本物と見分けがつかないくらいです(いや、そりゃ、もちろん違うんですけど…)。

Roxy Magicの「Virginia Plain」
Roxy Magicの「Both Ends Burning」
Roxy Magicの「Re-make/Re-model」
Roxy Magicの「If There Is Something」

Roxy Magic のH.P.


ところで、その昔、私もジャパンの完コピものまねバンド、ジャムパン [ Jampan ] を結成しようという企画があったのですが、ミック・カーン役(フレットレス・ベース)が見つからず企画倒れに終わってしまいました。

もし、関西在住でミック・カーン役に立候補したいという方がいらっしゃいましたらご一報くださいませ(笑)(いや、マジです。)。
もちろん、眉毛の処理はしていただきたいのですが、お化粧でごまかすのもアリです(笑)。



Buggles/The Age of Plastic

The Age of PlasticThe Age of Plastic
The Buggles

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バグルズ [ Buggles ] は、ティナ・チャールズのバック・バンド [ Tina Charles Band ] にいたトレヴァー・ホーン [ Trevor Horn ] と、ジェフリー・ダウンズ [ Geoff Downes ] からなるユニットです。

本作『The Age of Plastic (発表当時の邦題:プラスティックの中の未来)(現在の邦題:ラジオスターの悲劇)』は、彼らが79年に発表した1st アルバム。
パンク時代の末期に、後のニューウェイヴの下地となるテクノ・ミュージック的手法を用い、地味ながら音楽業界に一石を投じました。

このアルバムからは、今でもいろんなシチュエーションで流されることの多い「Video Killed The Radio Star (邦題:ラジオ・スターの悲劇)」という大ヒットシングルが生まれています。

ちなみに、1981年8月1日12時1分、アメリカで開局したMTVが最初にオンエアした記念すべきミュージックビデオがこの「ラジオ・スターの悲劇」のPVでした。

「Video Killed The Radio Star」のPV
2004年の「Video Killed The Radio Star」のライヴ映像
(トレヴァー、ジェフリー、ブルースを始め、コーラスまでオリジナル・メンバーです。)

バンドとしては、結果として一発屋的な扱いを受けることが多いものの、ニューウェイヴ時代の幕開けを告げた歴史的名作として今でも語り継がれているアルバムです。

「Living in the Plastic Age」のPV
「Elstree」のPV
TV番組での「Clean Clean」のライヴ映像

ところで、冒頭で、バグルスはトレヴァーとジェフリーのユニットと書いたのですが、実は、製作当初にはもう1人のメンバーがいたんですよ。
そのメンバーというのが、「ラジオスターの悲劇」の共作者でもあるブルース・ウーリー [ Bruce Woolley ] という人物で、シングルの発売前に脱退してしまったため、結局、2人のユニットとして本作を発表することになったようです。

さらに面白いのは、本作が発表されるまでに、カメラ・クラブ [ Bruce Woolley & The Camera Club ] というブルース・ウーリーのバンド名義のアルバム『English Garden』で「ラジオスターの悲劇」を発表しているんです(ちなみに、カメラ・クラブのメンバーにはトーマス・ドルビー [ Thomas Dolby ] の名前も見つけることができます)。
カメラ・クラブ版の方はバグルス版と違って、かなりバンドっぽい演奏なのですが、残念ながらすでに廃盤、レアなコレクターズ・アイテムと化しており、かなりのプレミアがついているので手を出せません(笑)。

これだけ有名な曲だけに意外と言えば意外ですが、共作とはいえ、発表順から言えば、オリジナルはカメラ・クラブ版の方ということになるのでしょうか?

ブルース・ウーリー & ザ・カメラ・クラブのライヴ映像
(なぜかナックの「マイ・シャローナ」を思い出してしまいました。笑)


さて、ZTTレーベル設立以降はプロデューサー業の方が有名なトレヴァー・ホーンですが、本作を久しぶりに聴いてみると、この頃から皮肉や遊び心をたっぷりと盛り込み、職人技とも言えるポップでメランコリックな近未来的無機質サウンドを構築しているのがわかります。

本作に関しては、時代性もあって、比較的チープな音色のテクノ・サウンドで構成されていますが、後のプロデュース作品はかなり大袈裟な空間処理がなされていることが多いので、同じような手法には聴こえないかも知れません。

しかし、バッキングをよく聴くと、音的にはチープながら、効果的なストリングス・ワークやメリハリを効かせたアレンジが施されており、後のプロデュース作品に通じるトレヴァーらしさを感じることができるのです。

考えてみれば、この後トレヴァー・ホーンがプロデュースしたアーチストの殆どが大ヒットしており、その一部はなぜか一発屋と化しています(笑)。
また、プロデュースされた側のその後のインタビューを読んでいると、必ずと言っていいほど、トレヴァーの楽曲への過剰な介入についての話が出てくるのです。

個人的には彼のプロデュース作品が大好きなのですが、プロデュースされる側にとってみれば、自分たちのアルバムなのに、自分たちの思い通りにならないのですから不満が残って当然です。

しかし、一発屋と化したアーチストは、トレヴァーの手から離れたことで商業的には失敗していることが多いのです。

これは、良くも悪くも、『トレヴァー・ホーン式 売るための方法論』が確立しており、その技術を用いて職人的なプロデュースがなされてきたという証なのかも知れませんね。

そして、その方法論の原型はバグルス時代に形作られたのだと考えることができるわけです。


このアルバムの発表後、トレヴァーとジェフリーは、制作に取りかかったばかりの2ndアルバムの録音を投げ出し、元々大ファンだったイエス [ YES ] に2人そろって加入するという暴挙に出ています。
しかし、イエスは、畑違いの2人を入れたことで従来のプログレ・ファンから総スカンをくらい、解散にまで追い込まれてしまいました(もちろん、それだけの理由ではないと思うのですが…)。

2人は、再びバグルスとして1981年に2ndアルバム『Adventures in Modern Recording (邦題:モダンレコーディングの冒険)』を発表することになるのですが、このアルバムの制作途中にジェフリーがエイジアに参加するため脱退、残りはトレヴァーがほとんど1人で仕上げています。

「Adventures In Modern Recording」のPV

2ndの頃にはすでにフェアライト(当時としてはモンスター級のサンプリング・マシン)を導入しており、1st に比べれば音的にはかなりのグレード・アップをしているものの、残念ながら、ヒット・シングルは生まれず、バグルズは自然消滅してしまいます。

とはいえ、この2ndで使い始めたフェアライトがZTTレーベル設立の引き金になったのは間違いないことでしょう。

その後トレヴァーは、ABCを始め、自ら立ち上げたZTTレーベルの面々や、一度ファンから総スカンをくらったイエス、最近ではタトゥーやベルセバまで次々とヒット曲を生み出す大御所プロデューサーとなりました。

そんなトレヴァー・ホーンの原点であり、80'sニューウェイヴの原点とも言える本作は、まさに歴史的名盤です。


なお、本作はオリジナルレコーディングマスターもので、3曲のボーナストラックを収録したお買い得盤です。

未聴の方や、「ラジオスターの悲劇」以外は知らないという方は、この機会にぜひ聴いてみてください。

この記事を最後まで読んでくださった方なら、間違いなく損はしないアルバムですよ。



U2/The Joshua Tree・Super Deluxe Edition

ヨシュア・トゥリー~スーパー・デラックス・エディション(初回限定盤)(DVD付)ヨシュア・トゥリー~スーパー・デラックス・エディション(初回限定盤)(DVD付)
U2

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昨年末発売のサウンド&レコーディング・マガジン 1月号(表紙:U2)(以降サンレコ)で、『U2 「ヨシュア・トゥリー」発売20周年!ボノ&エッジの発掘インタビューにみる "創造の瞬間”』という特集記事を読みました。

U2(ユーツー)の最高傑作という誉れも高い1987年発表の5thアルバム『The Joshua Tree(邦題:ヨシュア・トゥリー)』の発売20周年にちなんで昨年12月に発売された、2CD+1DVD+ブックレット+ポートレイトという限定セットからなる『The Joshua Tree・Super Deluxe Edition(邦題:ヨシュア・トゥリー・スーパー・デラックス・エディション)』にあわせて特集が組まれたようです。


U2といえば、アイルランドを代表する世界的に有名なグループで、現在でも第一線で活躍しているだけに、今さら解説は不要かも知れませんが、一応簡単に説明しておきます。

U2はアイルランド出身のロックバンドで、メンバーは、ボノ [ Bono ] (V,G)、ジ・エッジ [ The Edge ] (G,Key,V)、アダム・クレイトン [ Adam Clayton ] (B)、ラリー・マレン・ジュニア [ Larry Mullen Jr. ] (D)の4人。
アマチュア時代は、エッジの実兄ディック [ Dik Evans ] がメンバーとして参加していたこともあるのですが、メジャー・デビューの前に脱退しており、その後、現在まで一切メンバー・チェンジは行われていません。

グループ名の由来は、ウィキによれば『アメリカの偵察機U-2、ドイツの潜水艦Uボート、You too(ファンへのシンパシーを表す)などの諸説があるが、メンバー自身が語るところでは「バンド名を決める際に挙げた候補の内、一番マシなものを選んだだけで、特に意味はない」とのこと。
むしろ「U2」という無意味な言葉の解釈の自由こそが魅力と語っている(『U2 BY U2』 シンコーミュージック・エンタテイメント刊より)。
ちなみに、『アクトン・ベイビー』収録曲の「ズー・ステーション」はベルリンの実在する駅名(ドイツ語でZoologischer Garten)だが、そこへ行く電車路線をU2という。』ということでした。

なお、ボノ、ジ・エッジという名前は、幼少時代のコミューンでのニック・ネームで、当時の仲間、ギャビン [ Gavin Friday ] 、グッギ [ Guggi ] の二人はヴァージン・プルーンズ [ Virgin Purunes ] というアート系ゴシックバンドを結成、エッジの兄ディックをメンバーに迎えて同時期にデビューしています。
また、1stアルバム『Boy』と3rdアルバム『War(邦題:WAR(闘))』、ベスト盤『The Best Of U2 1980-1990』のアルバム・ジャケットに使われている写真の少年は、子役タレントをしていたギャビンの実弟です。


U2は、プロデューサーにスティーブ・リリーホワイト [ Steve Lillywhite ] を迎え、1980年にデビュー・アルバム『Boy』、1981年に2ndアルバム『October(邦題:アイリッシュ・オクトーバー)』、1983年に3rdアルバム『War』を発表、社会問題や政治的信条を歌い上げた作風で人気を集め、アイルランドからイギリス、ヨーロッパ、アメリカと活動の規模を拡大し、「New Year’s Day」が大ヒットした1983年には『ローリング・ストーン』誌の最優秀バンドに選出されました。

これらの初期3部作は、スティーヴ・リリーホワイトのプロデュース作品らしさの出た、荒削りでパワフルな曲調で、ソリッドなエッジのギターと力強いボノのボーカルにピタリとマッチ、さらに、社会問題をストレートに表現した歌詞とも合致し、幅広い層のファンをつかみました。

余談ですが、バグパイプ奏法で有名なビッグ・カントリー [ Big Country ] の初期2枚や、同じ頃のシンプル・マインズ [ Simple Minds] などもスティーヴ・リリーホワイトのプロデュースによるものなので、出音的にどこか共通点を感じさせてくれますね。
ポストパンク世代のアーチストが好む新しいスタイルだったのかも知れません。

続く1984年からは、ブライアン・イーノ [ Brian Eno ] とダニエル・ラノワ [ Daniel Lanois ] がプロデュースを担当、初期3部作で出来上がったバンドのカラーを生かしながらも、やや内省的で落ち着いた雰囲気を作り上げ、アメリカのルーツ・ミュージック(ブルース、ゴスペル、ソウルなど)をも取り込んでみせました。

本作『The Joshua Tree』は、1984年発表の4thアルバム『The Unforgettable Fire(邦題:焔)』以降に参加した数々のチャリティー・イベント後に発表されただけに知名度も格段にアップ、それまでのアルバムをはるかにしのぐ大ヒットとなりましたが、もちろん内容の方もかなりの出来で、今になって、本作のようなデラックス・エディションが発表されたのも頷けます。

一聴するとそれまでのアルバムよりも地味に聴こえるかも知れませんが、イーノとラノワによる奥行きを感じさせる空間処理に、U2サウンドの要とも言えるエッジ独特のディレイのかかったソリッドなギターが実にうまく乗り、円熟味を増したボノのボーカルを引き立てています。

地味に聴こえるのは、ある意味で攻撃的だった初期3部作よりも、メンバーそれぞれの個性が完成され、固定ファンのついたイーノ&ラノワ期の方が余裕があるためでしょうか。

サンレコのインタビューによれば、『バンドをスタジオに入れ、その演奏をテープに録るだけの昔ながらのシンプルなアプローチを再評価すべき時期が来たと感じている。余計な不純物を加えない、すばらしい手法だからね。 ~中略~ 今作『The Joshua Tree』は、そうしたアプローチを念頭に置いてレコーディングされたんだ。それでうまくいった曲もあれば、そうでもない曲もあるが、いずれにせよバッキング・トラックの大半は、スタジオかアダムの家のリビングでシンプルにライブ録りされたものがほとんどだ。』とのことで、かなりリラックスしたムードで録音されたことがうかがえます。

アメリカのルーツ・ミュージックの要素が加わったこと以外、メンバーの演奏自体は本質的に変わってはいないのですが、よりシンプルなミックスが行われたことによって、それぞれのプレイが引き立っているのでしょう。

また、ルーツ・ミュージックをこの時期になって取り込んだことについては、『このバンドを結成して活動を開始したとき、他のバンドと似たようなサウンドだけは死んでも出したくないと思っていた。昔ながらのロックン・ロールでさえ否定したほどだ。12小節のブルース形式にうんざりしていてね。何せ、ダブリンのストリップ・クラブなどで山のようにかけられていて、ほんとうに閉口していたんだ。だから、U2ではオリジナル・サウンドを作り上げロックン・ロールを新しい視点でとらえ直したいと思った。おかげでその試みには一応成功したと思う。そして、成功したからこそ今度は外部の音楽的影響も取り入れたいと思うようになった。バンド結成初期では刺激が強すぎたかもしれないが、成長した今ならかえっていい刺激になると思ってね。』とのことで、特にアメリカ市場を意識した策略のような意味はなかったようです。

3rdアルバム『War』がお気に入りだった当時の私からすれば、アメリカに媚を売っているようなこの要素だけが引っかかっていたのですが、今になってあらためて聴き込めば、それもまた面白いところです。

う~ん、考えてみれば実に大人びたアルバムです。
当時の彼らは20代半ばのはずですから、それを考えると驚かされますよね。

むしろ、発表当時に聴いた時よりも、年齢を重ねて音楽を色眼鏡なしで聴けるようになった今の方が、このアルバムを楽しめるような気がします。

イーノ&ラノワは、そのようなことも考えた上でシンプルにプロデュースしたのかも知れません。
おかげで、音的な意味でいつまでたっても古くささを感じさせない「永く聴ける名盤」が完成したのです。

この後、88年にアメリカ・ツアー時のドキュメンタリー映画『U2 魂の叫び』が公開され、そのサントラ的な6thアルバム『Rattle and Hum(邦題:魂の叫び)』を発表、そして、90年代はなぜかデジタル・ポップへと変貌を遂げるわけですが、2000年に入って再び80年代の彼らのスタイルを取り戻し、初期のU2を知らない若年層にも支持を得ています。

今や、アルバムの総売り上げは1億7千万枚を超え、グラミー賞獲得数も20以上(ロックバンドとしては最多)という超大物バンドとなりましたが、個人的には、良くも悪くも本作が一番U2らしい音を出しているような気がします。


話が長くなってしまいましたが、私はまだ通常盤しか持っていないので、詳しく内容を説明出来ませんが、サンレコの紹介記事によると、本作『The Joshua Tree・Super Deluxe Edition』には、以下のような楽曲が収録されているそうです。

なお、曲名が赤く表示されているものはYouTube映像をリンクしてありますので、曲タイトルをクリックしてゆっくりご覧ください。


●DISC 1 (CD)
Remastered Album Track Listing

1.Where the Streets Have No Name
2.I Still Haven't Found What I'm Looking For
3.With or Without You
4.Bullet the Blue Sky
5.Running to Stand Still
6.Red Hill Mining Town
7.In God's Country
8.Trip Through Your Wires
9.One Tree Hill
10.Exit
11.Mothers of the Disappeared


●DISC 2 (CD)
Bonus B-Sides & Rarities CD Track Listing

1.Luminous Times (Hold on to Love)
2.Walk to the Water
3.Spanish Eyes
4.Deep in the Heart
5.Silver and Gold
6.Sweetest Thing
7.Race Against Time
8.Where the Streets Have No Name (Single Edit)
9.Silver and Gold (Sun City Version) - (Bono with Keith Richards and Ron Wood)
10.Beautiful Ghost/Introduction to Songs of Experience
11.Wave Of Sorrow (Birdland)
12.Desert Of Our Love
13.Rise Up
14.Drunk Chicken / America


●DISC 3 (DVD)
DVD Live from Paris - filmed at the Hippodrome de Vincennes in Paris, on July 4 1987, on the European leg of The Joshua Tree tour.(1987年7月4日、パリ、ヴァンセンヌ競馬場でのライヴ)(約85分)

1.I Will Follow
2.Trip Through Your Wires
3.I Still Haven’t Found What I’m Looking For
4.MLK
5.The Unforgettable Fire
6.Sunday Bloody Sunday
7.Exit
8.In God’s Country
9.Electric Co.
10.Bad
11.October
12.New Year’s Day
13.Pride (In The Name Of Love)
14.Bullet The Blue Sky
15.Running To Stand Still
16.With Or Without You
17.Party Girl
18.40

19.『Outside It's America』
( Documentary on the Joshua Tree tour )(48分)

20.With or Without You
(music video,alternative version )

21.Red Hill Mining Town
(music video, directed by Neil Jordan)

22.Lucille
23.Lost Highway
(Dalton Brothers)

24.Super 8 Montage


ディスク1にはオリジナル11トラックの最新のデジタル・リマスタリング音源(エッジがディレクションを担当)を収録。

ディスク2には、当時発売された4枚のシングルのB面曲すべて、キース・リチャード [ Keith Richards ] とロン・ウッド [ Ron Wood ] をフィーチャーした「Silver and Gold」のアコースティック・ヴァージョン、iTunes限定のボックス・セットのみに収録されていた曲「Beautiful Ghost」、4曲の未発表曲を収録。

DVDの方には、後に映画化された『魂の叫び』でも見ることの出来る87年の「ヨシュア・トゥリー・ツアー」から、1987年7月4日にパリ・ヴァンセンヌ競馬場で行われたライヴをほぼフル収録(カヴァー曲はカット)。
他にも当時TV用に制作され、ここでしか観ることのできない「In God's Country」のビデオ・クリップを含むツアー前半のドキュメンタリー映像『Outside It's America』、超レアな未公開クリップ「Red Hill Mining Town」と「With or Without You」の全編モノクロ・クリップ、ツアー中にメンバー全員が変装して自らのオープニング・アクトを務めたカントリー・バンド=ダルトン・ブラザーズ [ Dalton Brothers ] の貴重な映像(観客の冷めた感じが笑えちゃうんですが、これって日本盤のみ?)など、2時間30分にも及ぶ充実の映像が収録されているそうです。

さらに、縦長BOXの中に、CD2枚、DVDそれぞれが収められるデジパック、54ページのブックレット、5種類のポートレイト(おそらくアントン・コービン [ Anton Corbijn ] の撮った写真でしょう)が収納されているそうで、ファンにはこたえられない豪華版ですね。

なお、このスーパー・デラックス・エディションは限定ものだそうなので、欲しい方は在庫のあるうちに手に入れてくださいね。

しかし、この価格でこれだけの内容とは、なんとお得なんでしょう。
できれば、他のアーチストの名盤でもこのような限定盤を発売していただきたいものです。


追記:
本作『The Joshua Tree』をメンバー自身が徹底解説した映像作品(DVD)『ヨシュア・トゥリー』というのも一昨年発売されており、メンバー、イーノ、ラノワ、そしてスティーヴ・リリーホワイトらがコンソールに向かって楽曲の詳細を解説しています。
楽曲を楽しむというよりは、メイキング・ドキュメンタリーのようなDVDですが、『The Joshua Tree』を徹底的に研究するにはもってこいですので、マニアの方や、U2のコピーをしておられるバンドの方にはこちらもおすすめです。


Spandau Ballet/True

TrueTrue
Spandau Ballet

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本作『True』は言わずと知れた1983年発表のスパンダー・バレエ [ Spandau Ballet ] の出世作で、英国だけでなく世界的に大ヒットした彼らの3rdアルバムです。

メンバーはトニー・ハドリー[Tony Hadley](V)、ゲイリー・ケンプ[Gary Kemp](G)、スティーヴ・ノーマン[Steve Norman](Sax,Per)、マーティン・ケンプ[Martin Kemp](B)、ジョン・キーブル[John Keeble](D)の5人で、80年代初頭にに起こったニュー・ロマンティックと呼ばれるムーブメントを代表するグループのひとつとして人気を博しました。

しかし、本作をよく聴けば、シンセサイザーやシモンズ(当時大流行した六角形のパッドのエレクトリック・ドラム)を多用こそしているものの、歌メロ的にはAOR(=Adult Oriented Rock)的な要素が強く、非常にロマンチックでムーディーな楽曲が多いことに気がつきます。

特に、アメリカでの人気を決定づけたタイトル曲「True」などは、その代表とも言えるバラードで、電子楽器という衣を剥がして聴けば、トラディショナルなブラック系のバラード曲との共通点がはっきりと確認できるのではないでしょうか。

「True」のPV
「Gold」のPV

そういった意味では後期のロキシー・ミュージック [ Roxy Music ] とも似たところがあり、そこに彼らの音楽的なルーツを見つけることも出来ます。

しかも、本作のレコーディングが行われたのは、バハマ諸島のナッソー・コンパス・ポイント・スタジオ。
ロキシーのファンの方ならもうお気づきのことかと思いますが、あの歴史的名作『Avalon』を始め、ブライアン・フェリーのソロ作品でも何度も使われたことで有名なあのスタジオです。

アルバム『True』のレコーディング風景

この点だけを見ても、彼らが後期ロキシーのフォロアーであることが想像がつきますね。


また、本作はアルバム全体を通して非常に音がシンプルで、ムダな装飾を極端に省いたアレンジがされています。

トレヴァー・ホーン [ Torevor Horn ] のプロデュースにより、同時期にデビューした、同じくロキシーのフォロアーであろうABCの1stアルバム『The Lexicon of Love』と似たポジションにありながら、アレンジの方法論的にはまったく逆になんです。

実は、一般的にはあまり知られていないのですが、スパンダー・バレエも一度だけトレヴァー・ホーンのプロデュースでシングルを発表しています。

81年のデビュー・アルバム『Journeys to Glory』と82年の2ndアルバム『Diamond』のプロデュースは、ヴィサージ [ Visage ] やバグルス [ Buggles ] でドラマーを担当していたリチャード・バージェス [ Richard James Burgess ] が担当しているのですが、本作の発表までに『Diamond』に収録された「Instinction」という曲をシングルカットしており、この1枚だけはトレヴァー・ホーンがプロデュースしているのです。

このシングルは、トレヴァー・ホーンらしさを感じさせる派手なアレンジが施されたもので、アルバムテイクとは別物、全英チャート10位というそこそこのヒットとなるものの、メンバー的には納得のいく作品ではなかったようです。

「Instinction」のPV(1:15くらいから流れる曲)


本作(LPレコード)のライナーノーツには、「トレヴァーは、あまりにも独裁的で、何でもスタジオで先にやってしまう。まるで先生みたいな態度なんだ。」とゲイリーが口にしていたことが書かれていました。

そんないきさつの後に制作された本作『True』は、イマジネイションやバナナラマを手掛けたことで名を上げた、スティーヴ・ジョリー [ Steve Jolly ] とトニー・スウェイン [ Tony Swain ] の2人組がプロデュースをを担当しています。

恐らく、トレヴァー・ホーンによる過剰なプロデュースの反動が本作のようなシンプルな構造のアルバムを生んだのだと推測するのですが、音数の少なさだけでなく、空間処理的な技術に関しても、トレヴァーの方法論とはまったく対照的であることはABCの『The Lexicon of Love』と比べれば明らかです。

同じくLPのライナーによれば、「トレヴァーが先生を呼んで来るとしたら、スティーヴとトニーは新しい生徒をクラスに紹介するような存在なんだ。」と、彼らとの共同作業であったことを表現しており、「今度のLPは、もっと歌を前面に出した内容で、僕にとってはリパーソナルな、そしてバンドにとっては、大人としての証のアルバムなんだ。」という言葉の通り、先生に頼ることなく、クラスメイト同士で正面から曲作りに向き合った、言わば、一人前になった彼らなりの作品が完成したというわけですね。

今聴くと、シモンズの音のせいか、どうしても時代性を感じてしまいますが、トニーの伸びやかな歌を引き立てるかのような必要最低限のバッキングだけに絞り込まれた演奏は潔さすら感じ、非常にアダルトな雰囲気をかもし出しています。


個人的にはトレヴァー・ホーンのプロデュース作品も大好きですので、もし、本作をトレヴァーがプロデュースしていたとしても失敗作とは感じないでしょう。
恐らくは ABCの『The Lexicon of Love』のようなストリングスを大々的にフューチャーしたゴージャスな作品となっていたことと思います。

しかし、過剰なオーバー・プロデュースに頼ることなく、シンプルな構成でここまでの名盤を完成させたのは、間違いなく楽曲のクオリティーの高さのおかげだと思います。

逆に言えば、楽曲のクオリティーを高めた分、過剰な装飾品が必要なくなったんでしょうね。

恐らく、このブログをご覧になっておられる方なら、「True」や「Gold」はご存知のことと思いますが、この記事がそれらの曲を久々に聴いてみるきっかけになれば嬉しく思います。

トニーは現在でもソロとして音楽活動を続けていますが、ロキシーも再結成したことですし、出来れば、そろそろスパンダー・バレエの再結成もお願いしたいところですね。

2007年1月のトニー・ハドリーのライヴ映像
(ちょっと太りましたが、あの美声は健在です。)


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